ある老人施設で、利用者さんに、あなたの一番の楽しみは何ですか?というアンケート調査をしたところ、家族と会うこと、テレビを見ること、等が上位を占めましたが、断トツの一位は、”食べること”だったそうです。
美味しいもの食べることは人生最大の楽しみですね。しかし、口からご飯が食べられなくなって、胃瘻等にせざるを得なくなったら、と思うとゾッとする人も多いと思います。
歯を喪失するに従って、次第に硬いものが食べられなくなってきますが、全く食べられなくなるわけではありません。ご飯が食べられなくなるのは、食べ物を飲み込む力、すなわち嚥下機能の衰えから起こります。
飲み込む力は、40代、50代あたりから徐々に低下していくと言われています。
飲み込む力を衰えないようにキープするには、日々鍛錬が必要です。と言ってもそんなに大変なトレーニングは必要なく、簡単なエクササイズを毎日するだけでいいのです。
いろいろなエクササイズがあるようですが、最も効果があるといわれているシャキア訓練を応用した、嚥下おでこ体操をご紹介しましょう。
おでこに手根部を当てて、おでこと手で押し合いっこをする体操です。頭のほうはおへそをのぞき込むような格好で下方向へ強く力を込めていき、手根部の方は上方向へ力を込め、頭に負けないくらいの力でおでこを押し戻していくのです。そして、押し合っている状態を5秒間キープ。これを5回から10回繰り返します。
しかし、不幸にも嚥下障害が起きてしまって、そういった間接訓練が出来ない場合、例えば認知症の方、そして嚥下障害が重く、訓練だけでは十分でない場合、当院では、ジェントルスティムという機械を使って治療、ケアを行っています。
この”ジェントルスティム”とは、皮膚に電極を装着し、2050Hzと2000Hzの電極を流し、神経へ50Hzの干渉波を送ることで嚥下反射惹起遅延の改善を狙った機器です。
一日3回、食前から使用するとよいようで、エビデンスも出来つつあります。
当院では、定期的に訪問診療を行うという条件のもと、無料で貸出しており、最近でも、使用1ヶ月で良くなったからもう使わなくて大丈夫になった、という患者さんがいらっしゃいました。
単にむし歯を治したり、入れ歯を作るだけでなく、生涯美味しく食事が出来るようにサポートすることを、当院のモットーの一つにしております。
参考文献 肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい 著 西山耕一郎