歯を1本2本と失っていくと、次第に物が嚙めなくなる、あるいはかみ合わせが悪くなっていってしまうので、歯が欠損したところにも歯を入れないといけません。ブリッジの適応症でない、あるいはブリッジを選択されない場合、取外し式の入れ歯になります。
義歯には保険の義歯と自費の義歯があります。自費の義歯といえば、かつては金属床あるいはテレスコープあるいはアタッチメント義歯でした。現在ではノンクラスプデンチャーすなわち金属のばねがない入れ歯が主流となってきております。なぜ普及してきたか?保険の義歯を代表とする入れ歯のばねは、違和感がある上に入れ歯をしていることが明確に分かられてしまう、保険の義歯の素材より軽い素材で作られているので違和感が少ない、そして何よりアタッチメント、テレスコープ義歯より格段に廉価であるからです。
そのノンクラスプデンチャーですが、義歯の裏側が柔らかい素材で出来たタイプの義歯があることをご存知でしょうか?バイテックグローバルジャパン社が提供するコンフォート義歯が代表です。コンフォートは商品名です。裏側が柔らかいため、硬いものを食べても痛みがでにくいいという特徴があります。
自分は硬めのものを食べても痛くないから別に裏側が柔らかくなくてもよいという方もいらっしゃるかもしれません。しかしここに実は義歯の本質的な問題が含まれているのです。
どういうことかというと、歯茎の土手は年々顎の骨が吸収して減っていってしまうため入れ歯と歯茎の間に徐々にすき間ができてきて、入れ歯が合わなくなっていってしまいます。ところがコンフォートでない普通のノンクラスプデンチャーは、歯に密着するように作られるためゆるくなりにくく、義歯の裏貼り調整が必要な場合でも、患者さんの自覚が少ない、つぎはぎのようになる等のため患者さんの理解が得られにくい、また術者側も裏貼りが必要な時期が明確に分かりにくい、等のためノンクラスプデンチャーの裏貼り調整はそれほど一般的には行われていないと考えられます。裏貼り調整が必要であってもしない場合どうなるか?当然嚙み合わせが悪くなってしまいます。一方、コンフォート義歯は義歯の裏側の柔らかい部分が明確な裏貼りスペースであり、技工所仕上げのためきれいに仕上がる、2年から5年の張り替え保証があるため裏貼りを行いやすい等の面があるため、可能であればコンフォート義歯を選択した方がいいです。ただ、コンフォート義歯は通常のノンクラスプデンチャーよりやや高額ということはあります。