アナタの歯のホームドクターを目指します。

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~選び方とメインテナンスの参考のために~

くの方が、義歯を作る場合、保険の入れ歯にされると思います。
勿論それで十分に機能する場合も多いと思いますが、利点、欠点を十分認識した上でされた方がいいです。

保険の入れ歯の最大の利点は価格が極めて安いということでしょう。
その、価格が安いということが、歯科医院側にとってはあまり手間をかけられないということにつながりかねなく、細かいところまで行き届いていない、ということになることがあります。
それと保険の部分入れ歯の場合、入れ歯のばね(クラスプといいます)がつきます。

この、ばねは単に入れ歯に取り付けるだけでなく、ばねのかかる歯の相当部分的にばねのピッタリ収まるスペースをあらかじめ作っておかないといけません。
その歯が銀歯の場合は十分なスペースが作られることが多いのですが、天然歯の場合はスペース不足の場合が時々あります。
削除量は1ミリ程度なのですが、術者側からすれば、知覚過敏が起きるのではないかという恐れ、あるいは天然歯を削られることへの患者さんの拒否感を感じることがあるから等のためからです。


©2025minotae

なぜスペース不足だとよくないのか?
入れ歯のばねが歯並びの列からとび出たようようになるからです。
なぜそれがよくないかというと、咀嚼運動のときに入れ歯のばねが、咀嚼の障害になることがあるからです。
大阪大学名誉教授丸山剛郎先生が、そのことをシロナソアナライザーという精密機器を駆使して解明されました。
ただ保険の部分入れ歯の場合、ばね(クラスプ)がないと入れ歯がガタガタ動いたり歯茎に喰いこんで痛みが出たりしかねません。


壱:ノンクラスプデンチャーについて

しかしながらばねがなくても大丈夫な入れ歯があるのです。
それがノンクラスプデンチャーです。なぜばねがなくても大丈夫なのか?
それは歯と歯茎に密着するように作られるからで、加えてノンクラスプデンチャーの素材は適度な弾力があり、アンダーカットという、歯の少し凹んだ部分も義歯の維持として利用できるからです。
保険の入れ歯の素材は弾力性がそれ程ないので、そういう訳にはいきません。

ノンクラスプデンチャーの更なる利点としては、保険の入れ歯の素材より軽くて壊れにくい素材で作られており、快適であるということと、入れ歯のばねがないため審美性がよく、入れ歯をしているのに気が付かれにくいということがあります。
そういった理由のため、近年ノンクラスプデンチャーは急速に普及してきました。

しかし問題がないわけではありません。
ブログでも少し書きましたが、入れ歯の裏貼り調整がノンクラスプデンチャーの場合しずらいということがあります。
ノンクラスプデンチャー特有な素材のため裏貼り材料が接着しにくいという点、そして入れ歯がゆるくなりにくいため患者さんの理解が得にくいということがあります。


弐:コンフォート義歯について

そういった点を解決するノンクラスプデンチャーが実はあります。
それがコンフォート義歯です。
コンフォート義歯とは、ノンクラスプデンチャーの裏側が、柔らかいシリコン素材で加工された特殊義歯で、バイテックグローバルジャパン社が提供する義歯です。
義歯の裏側が柔らかいシリコン素材なので、硬いものを噛んでも痛くなりにくく、保険の入れ歯では食べられなかったものが食べられるようになることが多々あります。
ただし何でも食べられるようになるかは個人差があるので、何でも食べられるようになるとは断言はできません。
このコンフォート義歯の裏側のシリコン加工してある部分は、張り替え可能で、合わなくなった場合、技工所での加工となりますが、気軽に張り替えができます。
気軽に張り替えが出来るという理由は、バイテックグローバルジャパン社が、歯の欠損歯数により、2年から5年の張り替え保証をしているからです。

ここでなぜ裏貼り調整しないといけないか考えてみましょう。
義歯は使っているうちに義歯の下の歯茎の土手が瘦せていきます。
そうなると入れ歯と歯茎の間にすき間ができてきます。
そうするとそのすき間がなくなるように上下の歯が咬みこんでくるためかみ合わせが低くなり、かみ合わせが悪くなってしまいます。
あるいは、部分義歯というのは、本来歯と歯茎の両方で咬む力を負担しますが、そのうちの歯茎の負担が減るため歯の負担が大きくなり、結果として歯の寿命が短くなってしまいます。
であるので、個人差はありますが、時に応じて裏貼り調整は必要となってきます。

ここで一つのポイントとなるのは、裏貼り調整をコンフォート義歯は技工所でするという点です。
診療所でチェアーサイドですることも勿論でき、広く行われていますが、ごくたまにかみ合わせがずれることがあります。
ですので、技工所で加工するのがベターです。

ちょっと難しい話となりますが、部分入れ歯の型取りをいかにすべきか歯科学会で長年議論されてきました。
歯は動かないが、歯茎は圧をかけると形が変わるからです。
この点について、コンフォート義歯は、歯の型取りと歯茎の型取りを日にちをずらしてするということで解決しています。

以上の点より、コンフォート義歯は現在最も選択すべき義歯と言ってもよいかと思います。
詳しくはコンフォート義歯のホームページに書いてありますが、欠損歯数により、13万円から43万円となっております。

“コンフォート義歯ってよい気がしますが、どうしてしている歯科医院は多くないんですか?と訊かれたことがあります。
内部事情になりますが、コンフォート義歯を発注するには、バイテックグローバルジャパン社に年会費を払わないといけないからです。
なのでインプラントをしている歯科医院はそれに傾注することになります。
当院の方針は、インプラントはせずに義歯(あるいはブリッジ)に専心、です。

裏側が柔らかい入れ歯って保険でできないんですか?と訊かれたことがあります。
保険で裏側が柔らかい入れ歯は出来ますが、下顎の総入れ歯に限られています。
しかも最初からそれを目的として作ることはできません。
保険の決まり、制約があり、義歯の完成後何カ月か経たないとできません。
ですので完成した義歯の痛み等が良くならなければ数か月苦痛の日々を過ごすことになります。

保険の総義歯で裏側が柔らかいものとコンフォート義歯では素材的にどちらが良いか?
値段の違いからコンフォート義歯のほうがよいであろうことは予測できます。
実際、バイテックグローバルジャパン社の営業部に問い合わせてみました。
コンフォート義歯の利点の1つは、厚さが薄くてもやわらかく、口腔粘膜に近い柔らかさがあるということ。
もう一つは温度差や経時的変化があっても比較的材料劣化が少ないということです。
あと、先に書いた通り2年から5年の張り替え保証がある点です。
保険の下顎の総義歯の場合、保証はなく、張り替えの場合、また1からの費用がかかります。

下顎の総義歯、これは歯科医師にとってひとつの悩みの種です。
痛みが出やすいうえ、安定しづらく、ガタガタ動きやすいからです。
これを解決させるため、吸着義歯を作る手法が編み出されました。
その手法は必ず吸着するというわけではありませんが。
ただその吸着義歯を作る手法はかなり歯茎を圧迫させて作るため、人によっては完成した義歯の痛みがなかなか良くならない、ということがおこります。
なので私、筆者はそのやり方をすることをやめました。
吸着は永続するものではなく、私、筆者は密着義歯を目指しています。


参:磁性アタッチメント義歯について

入れ歯を安定させるため、磁石を使った磁性アタッチメント義歯という入れ歯ががあります。
これは根だけ残っている歯に、磁石がくっつく磁性体の金属のキャップをくっつけ、入れ歯に磁石を組み込んで吸着させるというものです。
根だけ残っている歯があれば作ることができます。
ただ使える歯根と使えない歯根があり、どんな残根でもできるわけではありません。
この磁性アタッチメント義歯は数年前から保険適応になりました。
先の下顎の総義歯の入れ歯が安定しずらい症例等に有効です。

その他、上顎の入れ歯でゆるくて落ちて来やすい症例等にも有効です。
例えば上顎に1本だけ歯が残っている場合、その歯1本だけで上の入れ歯を安定させるのは無理があることがあります。
そういった場合、磁性アタッチメント義歯は一つの選択肢としてあります。
保険の磁性アタッチメント義歯はあまり差額利益がでないからしないという先生もいます。
しかし私、筆者は患者さんのモチベーションアップにつながるので、有効な場合は積極的にしていこうと思っています。
ただ磁性アタッチメント義歯の場合、MRI検査のときの診断に差し支えがあるので、場合によってはMRI検査のときに外さないといけない場合があることが欠点となります。


四:金属床義歯について

先のノンクラスプデンチャーは、保険の入れ歯よりかなり薄く軽く出来ますが、それでもある程度の厚みがあります。
ノンクラスプデンチャーより更に薄く違和感が少なくなりうる義歯があります。
それが金属床です。
金属床は、義歯の、外からは見えにくい内側が金属で出来ており、厚さは保険の入れ歯の3分の1の厚さで、勿論ノンクラスプデンチャーより薄いです。

またノンクラスプデンチャーと組み合わせることもできます。
通常入れ歯の義歯の素材は熱伝導がよいわけでなく、食べ物の冷たい感じや温かい感じが伝わりにくいのですが、金属床の場合は食べ物の温かい感じや冷たい感じがしっかり伝わるので、食事もより美味しくいただけます。
金属床の金属の素材は、最も使われるものがコバルトクロム合金とチタンです。
コバルトクロムのほうが値段が安いのですが、少し重いので、値段はそれより高くなりますが、軽くできるので、チタンのほうがお薦めです。
ただ、金属床も何年かすると裏貼り調整しないといけなくなってきますが、裏貼り調整をすると金属床の利点が薄くなるため、そうなったら新しい作り直した方がいいです。

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